by 廻 由美子
前回の「アナザー・ピエロとHISASHI」はこちら
さて、7月6日のHISASHI with廻 由美子〜カバレット・ソング〜
で歌われるフレデリック・ホランダーのソングについてお話ししようと思います。
ホランダーについてはこちらのブログ「フレデリック・ホランダー<カバレット>」で詳しく書いていますので、ぜひご覧ください。
5月12日の工藤あかねx廻 由美子〜背徳と官能〜でも、1901年あたりのシェーンベルクのキャバレー(カバレット)・ソングを取り上げましたが、今回の舞台は、第一次大戦後、1920年代のベルリンです。
1920年代のベルリンって?
第一次大戦後の疲弊した貧しいベルリンに追い討ちをかけるようにハイパーインフレが起こります。庶民は飢え死にするか自殺するか、身を売るか泥棒になるか、ギリギリの選択を迫られていました。
卵一個の値段が朝と夜とでケタ違いに変わる、価値の無くなったお札を子供が切って遊ぶハイパーインフレ。そんな中でマトモに貯蓄をするような人はいません。
泥棒も成金も共に刹那的になっていき、モラルも治安もどんどん低下していきます。
今回のコンサートの前半部分は、その刹那的な享楽を追い求めるベルリンのカバレット・ソングの中でも代表格のフレデリック・ホランダーのソングです。
「フレデリック・ホランダー<カバレット>」でも書きましたが、筋金入りのカバレット人であるホランダーは、「キャバレーとは、鉄でできた凶暴な者たちを、洗練された音楽や言葉という、唯一の武器で退治できる戦場」と言っています。
そんなカバレット・ソングの聴きどころ!です。
鬼才HISASHIのこと、ひと筋縄ではいきません。
今回歌うホランダーの曲に、なんと彼が「日本語詞」を書いているのです!
ちょうど年代的にも大正ロマンとダブル部分があるので(大正時代は1912年から1926年)、HISASHIの書いた日本語詞とホランダーの曲が素晴らしい化学変化を起こしました!
これはまるで大正ロマンのカフェ・ミュージックのようです!
一緒にやっているとまるで無声映画のピアニストと弁士になったよう。
さて、HISASHIが作ったホランダー・ソングの題名をご紹介しましょう。
「やっぱりキートン」
「悲しきヴェルレーヌ」
「Your Sweet Blue Eyes」
「カルメンシータ」
「メリケンからブルース」
「呆れるほどにC調ね」
ちょっと解説しますと、
「やっぱりキートン」の「キートン」とはもちろんあの最高の喜劇役者「バスター・キートン」です。「私にはキートンだけよ!みんなはチャップリンというけれど、やっぱりキートン!」と歌うのです。
「悲しきヴェルレーヌ」とくれば、寒い夜、路地裏、失恋、物悲しいギター、など思い浮かびますね。うらぶれた恋歌です。
「Your Sweet Blue Eyes」題名は英語なれど、歌詞は日本語です。「艶めく瞳で 誰にでも愛をふりそそぐ人、僕にだけ愛をふりそそいで」とか言っちゃって。
「カルメンシータ」、これはもう情熱的な南国的女性のイメージが踊っていそう。「ガス欠だけど、オイルがわりにシャンパンよ!」と威勢のいいカルメンさん。
「メリケンからブルース」とは「アメリカンからブルース」のこと。アメリカンをメリケンと言うなんざ、昔の人の発音は、なるほどスバラシイ!アメリカからジャズの入ってきたベルリンです。
「呆れるほどにC調ね」とくれば、なんてイイカゲンな奴!お調子モノね!でも誘いにのっちゃうわ、てな感じでしょうか。
さあ、これを見るだけでもイメージが広がりますね!
2人で軽やかにベルリンと大正ロマンを駆け抜けます。
お楽しみに!
2024年5月30日・記
廻 由美子
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