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シェーンベルク・シリーズ最終公演

by 廻 由美子


前回のブログ「工藤あかねx廻 由美子・公演レポート」はこちらをご覧ください。

2024年12月1日(日)、【新しい耳】シェーンベルク・シリーズ最終公演が行われました。

中川賢一(ピアノ)x石上真由子(ヴァイオリン)xマルモ・ササキ(チェロ)

〜洪水の前に〜

R.ワーグナー:「トリスタンとイゾルデ」(1859)より「前奏曲と愛の死」ピアノ・ソロ

C.ドビュッシー:「牧神の午後への前奏曲」(1894) ピアノ・ソロ

A.シェーンベルク:「浄夜」(1899)ピアノ・トリオ


ご出演3人の演奏家の素晴らしさについては、こちらのブログ「豪華出演者紹介!」をご覧いただきたいですが、リハーサルからその素晴らしさに何度もゾクゾクワクワク!

本番への期待感もハンパなかったですが、さあ、いよいよ本番です。

中川賢一さんのピアノ・ソロによるワーグナー「トリスタンとイゾルデ〜前奏曲と愛の死」冒頭1音目から、会場には濃厚な後期ロマン派の香気が立ち上りました。

オーケストラ・スコアを見ながらの演奏は、オーケストラそれぞれの楽器奏者たち、指揮者が全て中川さんの身体に入り込んだようで、その場でつくられていく豊かで立体的な音楽に、客席はどんどん引き込まれていきました。


次のドビュッシーへ移る前に、中川さんの解説トーク。中川さんの知識袋は無尽蔵なので、廻はいろいろお聞きしたいことでいっぱいで、インタビューのような形になりました。

ワーグナーからシェーンベルクへ行く音楽の道のり、社会背景、和声の話など、今回のプログラムの「その心」をわかりやすく話してくださり、聴き手の耳もスムーズにドビュッシーへと移行。

同じような半音階的素材ながら、全く違う色彩を持つドビュッシーを楽しんだあとは、いよいよシェーンベルク「浄夜」です。

石上真由子さん、マルモ・ササキさんも登場され、ピアノ・トリオ版による「浄夜」と弦楽6重奏や弦楽オーケストラによるものとの違いを話してくれました。

「弦合奏だとみんなで横に進んでいく感じだけれど、ピアノによって和声の柱がしっかり立つので、構造がとても良く見えた」「3人なので位置も近く、音も聴きやすいのでコミニュケーションが取りやすい」など、実際に演奏する人ならではの声を聞くことができました。

また、中川さんの提案で、「浄夜」と同じ年に作られた歌曲や、作品1の歌曲などの1部分がヴァイオリン、チェロ、によって演奏され、「浄夜」への期待がますます高まっていきます。

いよいよ「浄夜」ピアノ・トリオ版です!

オリジナルの弦楽合奏版で聴く場合は、重厚な響きや、それぞれの弦楽奏者たちから溢れ出る歌などが魅力の「浄夜」ですが、ピアノ・トリオ版で演奏されることによってまた違った魅力、星空の煌めき、宇宙的なスケール感、などが壮大に表現されていきます。

ヴァイオリンの石上真由子さんの情熱と知性、躍動と静謐、勇気とエレガンスがまじりあう表現力、チェロのマルモ・ササキさんが放つ1音1音の発言力、発信力、楽器、身体、音楽が全て一体となった演奏、ピアノの中川賢一さんのオーケストラをも凌駕するような立体的表現、真摯さ、次々と奥底から湧き出てくる表現力と相まって、このメンバー、この場、この瞬間でしか聴けない音楽が誕生していきました。

また、音を出すことによって「沈黙」の深さもが表現され、最後の音が消えた後の客席は、しばらく拍手も忘れ、余韻を聴き続け、沈黙を聴き続けていました。

1年間を通して開催された【新しい耳】2024シェーンベルク・シリーズもこの公演を持って終了です。

本当にありがとうございました!

シェーンベルクについてのブログは

mimi-newsでぜひお読みください。

来年は新たに年間シリーズ「響きあう20年代!」を開催いたします。

下の「速報」をご覧ください。

1620年代から2020年代まで、音楽界では、社会では、何が起こったいたのでしょう。

どうぞご期待ください!2025年1月5日発売です!


2024年12月4日・記

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