松﨑愛、プログラムに寄せて
by 廻 由美子

〜モダン・タイムス〜第5弾!
2026年10月11日(日)15:30開演(15:00開場)
松﨑 愛(ピアノ)
〜光への帰還〜
E.シュルホフ:ホット・ミュージックWV92(1928)
P.ヒンデミット:組曲「1922年」op.26(1922)
G.リゲティ:ムジカ・リチェルカータ(1951)
前回はヒンデミットの「1922年」をご紹介し(松﨑愛〜光への帰還3・ヒンデミット1922)、その時代の空気などもお伝えいたしましたが、今回は、松﨑愛さんご自身が、プログラムに対する思い、意味を書いたメッセージを寄せてくださいました。
プログラムはその人の考え、音楽感、世界観が、色濃く出ます。
「モダン・タイムス」というシリーズで、自分が何を伝えたいか、それがビシビシと伝わってきます。
どうぞお読みください。
2030年を間近に控えて
松﨑 愛
気づけば2020年代も半ばに突入し、コロナウイルスのパンデミックも過去となりつつある。パンデミックと戦争、時代は過去をなぞるかのように進み、誰もが漠然とした不安を抱えているように感じる。
およそ100年前、戦間期と呼ばれる時期に、とくに敗戦国側で生まれた音楽作品には、前の時代への反感と新しい時代への期待が強くにじみ出ている。
ヒンデミットの組曲《1922年》(1922)はその端的な一例だ。
シュルホフもまた、戦間期を20代の多感な時期に過ごし、ひたすらに「新しいもの」を希求した。
激動の渦中にあったドイツを離れ、故郷プラハで書かれた《ホット・ミュージック》(1928)は、彼が1919年から1920年代初頭に残した数々の「奇抜な」作風からするりと抜け出し、未来への希望がにじむ音を宿している。
先の2人が青年期を迎えていた1923年に生まれたリゲティは、第二次世界大戦、そしてその後の世界情勢に大きく翻弄されたひとりである。
先述の1920年代の2作品からおよそ30年後に書かれた《ムジカ・リチェルカータ》(1951-1953)からは、明確な時代の変遷を感じ取れる。戦争は多くを破壊した。しかし文化、ひいては音楽はそこから立ち上がり、常に新たな光を目指す。
今回のプログラムは、時代の変化に音楽がどのように対応してきたのかを聴衆と共に探りたい、との思いから構成した。この3作品から、本プログラムでは空白となっている1930年代の様相さえも描き出すことができると信じている。
2026年も終盤に差し掛かっている。われわれは過去をなぞるのではなく、過去に学ばなければならない。それでこそ新たな、そして本当の意味での「光への帰還」を目指すことができると思うのだ。
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松﨑 愛(ピアノ) Ai Matsuzaki
桐朋学園大学ピアノ専攻卒業、副専攻として音楽学専攻修了。同大学大学院音楽研究科修士課程、博士後期課程修了。博士(音楽)。
主に1920年代のベルリンで生まれた音楽を専門とする。
2023-2025年度福島育英会奨学生。
2026年9月20日・記 |





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