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大瀧拓哉「バルトーク」公演レポート

  • megurin37
  • 8月24日
  • 読了時間: 6分

by 廻 由美子


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2025年 8/2(土)

大瀧拓哉(Takuya Otaki ピアノ)

~バルトーク・ルネサンス1920s~

たくさんのお客様にご来場いただき、熱気と感動の中、終了いたしました!

ありがとうございました!

<全 B.バルトーク・プログラム>

15のハンガリー農民の歌 (1914/1918)

ミクロコスモス(1926 ~39) 第3巻~第6巻より

戸外にて(1926)

ピアノソナタ(1926)



2016年、オルレアン国際ピアノコンクールで見事優勝されてから、国内外を問わず大活躍の大瀧拓哉さん。

その大瀧拓哉さんが「バルトーク・ルネサンス1920s」と題してバルトークの作品を一挙に演奏!というので、チケットは早々と完売、当日は開場前から長い列ができる、という熱気あふれる公演となりました。

ムンムンの客席に爽やかな笑顔で登場した大瀧拓哉さん、ピアノの前に座ると「バララララン!チララン!」とチンバロン(ハンガリーの民族楽器)のような魅力的な音で「15のハンガリー農民の歌」を弾き始めます。

会場の空気はいっぺんに変わり、土、草、藁、の香りが漂い出し、大瀧さんが弾き進めるにつれ、農民たちの話し声、歌う声、踊る足音、も聴こえてくるようです!

この曲は、バルトークが農村の奥深く入り込み、農民に歌ってもらったものを録音し、楽譜に書き取り、アレンジしたものです。

「歌ってもらい」と簡単に書きましたが、まず農村奥深く行くのが大変ですし、そこへ辿り着いても、都会から来た知らないオジサンになんか、「歌う?なんでだ。だいたいアンタの持ってるその機械(録音機)はなんだね?あやしいぞ」と、オイソレとは歌ってくれません。


そこはバルトークの天才的語学能力がモノを言います。数え切れないほどの語学を習得したのみならず、「方言」も習得していたバルトークは、土地の言葉で話しかけ、信頼を得て歌ってもらうことができたようです。

「作曲家、ピアニスト、民族音楽学者、教育者として、それぞれの分野で誰も到達できないような仕事をして、一体バルトークって何人いるんだろう、と思うくらいです」

とトークでの大瀧拓哉さん。

さて、次は「ミクロコスモス」から数曲を選び「教育を目的に書かれたものですが、自分なりにこだわって分類してみました(大瀧)」と3つのグループに分けて説明してくれました。

なるほど、大瀧さんが「描写的、理論的、民族的」というバルトークの意図を明確に掴んで分類したことがわかります。

演奏を聴いていると、そこには「教育を目的」という本当の意味が浮かび上がるようでした。

真の教育「想像する力」「考える力」「遊べる力」をつけるようになっていて、バルトークが教育で何を大切にしていたかが伝わってきます。

そしていよいよ大曲2つ、「戸外にて」「ピアノソナタ」です。


「戸外」といえば「自然」「アウトドア」なわけですが、バロックから近現代まで「自然」は大きなテーマで、多くの作曲家たちも取り組んできていますよね。

しかし!

バルトークの「戸外にて」は5つの曲から成っていますが、どれもこれも、それまでの西ヨーロッパ中心のクラシック音楽とは全く違う自然が見え、未知の音が聴こえるのです。

ドン!ドン!という恐ろしい音で始まる第1曲目「笛と太鼓」は、「起きろ!何かが始まるぞ!」というメッセージのようであり、闇の空気がビリビリと引き裂かれるような不穏なエネルギーに満ちて演奏されました。

そして第2曲目の「バルカローレ」

ショパンに代表される「愛のうた」のようなバルカローレをイメージしたらイケません。これは不気味な波で、そこに永遠に刻まれる「時」が「チッ、チッ」と現れては消えます。真っ黒い夜の海が、それこそ海のようなベーゼンドルファー・インペリアルで表現されていきます。

第3曲目の「ミュゼット」

遠くから聴こえてくるバグパイプ大瀧拓哉さんの演奏を聴きながら、だんだんと近づいてくる集団が見えるようでした。


そして第4曲目の「夜の音楽」

ドビュッシーもショパンも「夜」を描かせたら超一流の天才です。しかし、バルトークの夜はなんと違うのでしょう!それについてはこちらのブログに載っている大瀧拓哉さんの文章「バルトークの夜」をお読みください。

第5曲目は「狩」

左手の執拗に続くオスティナートは、獲物を追い詰める残酷さで演奏されます。

そして時折ブッぱなすや、動物たちの鋭い叫びが交差し、どちらも倒れ込むようにしてこの作品は幕を閉じます。

終わった時は興奮してドキドキがなかなか止まりませんでした。

「戸外にて」を弾くだけでも凄いのですが、大曲の後に、もう1つの大曲「ピアノソナタ」が続きます。

大瀧拓哉さんは、ピアノという楽器を「リズム楽器」として極限まで使い切り、小さな鈴から大きな鐘、大中小の太鼓、世界中の打楽器の音色をピアノから引き出していきます。

太鼓に乗って響く鋭い笛の音、祈り、そして狂気に満ちた笑い声まで描き切っているこの作品は、普段は無口な農民たちがどれだけ爆発的なものを持っているか、「祭り」「暴動」のギリギリのライン、という計り知れないエナジーを感じさせました。

終演後も興奮冷めやらないお客様がB-tech Japanのロビーで大瀧拓哉さんを囲んでご歓談、皆さんこの躍動する音楽空間から去りがたい雰囲気でした。

素晴らしい演奏をありがとうございました!

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関連ブログ

 

 

↓大瀧拓哉さんのインフォ。

 

公式HP

 

CDリリース


大瀧拓哉(ピアノ) Takuya Otaki

愛知県立芸術大学、シュトゥットガルト音楽演劇大学、アンサンブル モデルン・アカデミー、パリ国立高等音楽院で学ぶ。2016年オルレアン国際ピアノコンクールで優勝。その後フランスを中心に多くのリサイタルや音楽祭に出演。アンサンブル奏者としてもヨーロッパ各地でコンサートを行う。2017年にフランスでデビューCD“ベラ・バルトークとヴィルトゥオージティ”をリリース。2024年に“ジェフスキ「不屈の民」変奏曲/ノース・アメリカン・バラード全6曲”をリリースし、各誌にて高い評価を得ている。現在東京を拠点にソロ、室内楽、協奏曲のソリスト、現代音楽のアンサンブルや初演など、多岐にわたる活動を行う。


廻 由美子

2025年8月7日・記 

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