by 廻 由美子
前回のブログ「ツェムリンスキーxハーレム・ルネサンス」はこちら。
ツェムリンスキーがインスパイアされたハーレム・ルネサンスの詩人たちをご紹介した前回のメルマガに、嬉しい反響が寄せられました。
これを機にたくさんの人がハーレム・ルネサンスの詩人たち、黒人の詩人や文学者たちに興味を持っていただけると幸いです!
さて、ツェムリンスキーの「12の歌曲」(1937〜38)の第11番には、更にまた、ヨーロッパ系ではない詩人が登場します。
だからと言って全然関係ないか、というとそんなことはありません。
ドイツの大詩人といえばゲーテ(1749〜1832)。
そのゲーテが影響を受けたというインドの詩人、カーリダーサの詩にツェムリンスキーが音楽を書いているのです。
ちなみに、次の曲、第12番の詩はゲーテによるものです。ちゃんとリンクしているのですね。
カーリダーサは4〜5世紀にかけて活躍した人で、ゲーテが影響を受けた「シャクンタラー」という戯曲は西洋に最初に紹介されたサンスクリット文学だそうです。
ではツェムリンスキーがどんな詩に音楽的霊感を受けたのか見てみましょう。
A.ツェムリンスキー:12の歌曲 作品27より第11番
詩:カーリダーサ 詩集「インドのハープ」より第14詩「雨季」
<歌詞大意>
花の重みで木の枝がしなり
銀色の雨の雫がきらめく
湿った空にはむせかえるような芳香が満ち
愛するものたちの、思いは募る
雨季のないヨーロッパ人にとって、このような雨の表現はほとんど神秘かもしれません。
木々を、花々を濡らし、人間の身体を濡らし、その感情までも濡らしていく雨。
雨に濡れてシナをつくる枝もあれば、雨を飲むように開いて強い香りを放つ花もあり、雨そのものがエロティックな存在に感じられてしまいます。
ツェムリンスキーはヨーロッパの乾いた雨しか知らないと思いますが、芸術家はどこへでも心で旅することができるので、シトシト官能的な雨を見事に音楽で表現しています。
「新しい耳」シェーンベルク・シリーズ
2024年11月24日(日):〜失われた楽園を求めて〜
出演:工藤あかね(ソプラノ) x 廻 由美子(ピアノ)
E.シュルホフ:5つの歌 作品32(1919)
A.ツエムリンスキー:12の歌曲 作品27より8番〜12番(1937〜38)
A. シェーンベルク:「架空庭園の書」(1908〜1909)
15:30開演、B-tech 東京スタジオ
東京都港区虎ノ門1−1−3
どうぞお楽しみに。
2024年9月18日・記
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