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林 光 <カバレット!その2>

by 廻 由美子

前回の「フレデリック・ホランダー」についてはこちらをご覧ください。

さて、今回は林光(1931〜2012)です!

「新しい耳」シェーンベルク・シリーズ2024、7月6日(土)に、ホランダーとカップリングで、HISASHI x 廻 由美子で演る林光ソングは、「行ってしまったあんた...」や「舟唄」「雨に濡れた木馬」など、劇団自由劇場のために書かれたソングを中心としています。

どれもこれも魅力的なソングばかり!

楽譜をあけると、オモチャ箱を開けたようでもあり、裏通りや、さびれた公園に行ったようでもあり、芝居の楽屋を覗いたようでもあり、映画の中に入っていったようでもあり、と、本当に多彩なのです。

こんなソングを書いた林光とは、いったいどんな人なのでしょう。

慶応の高校から藝大、小さい頃から作曲を尾高尚忠に師事、芸術祭大賞、尾高賞受賞、サントリー音楽賞、という超エリート・コースですが、そこにデンと居座らず、決して「権威」にならなかったところが、林光の素敵さです。

浅利慶太や千田是也などの演劇人、新藤兼人や大島渚といった映画人とも交流し、芝居や映画の音楽をたくさん書いたり、「オペラシアターこんにゃく座」の座付き作曲家になるなど、まさに天衣無縫。

その活動ぶりは、ホランダーとも相通じるものがありますね。

林光の、劇場と音楽、については、作曲家・ピアニストの寺嶋陸也さんが、2022年12月11日「新しい耳」@B-techシリーズ「寺嶋陸也 林光を弾く・語る」にて、語ってくださっています。一部をご紹介しましょう。

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:え〜、前に寺嶋さんが「林先生から、『劇場』とは何か、をすごく学んだ」とおっしゃってましたが、それをもっと噛み砕いて言うと、どういうことでしょうか。

寺嶋:林さんは、演奏会用の曲をお書きになる他にも、芝居の音楽ですとか、或いはテレビドラマの音楽ですとか、映画の音楽とか、そういうのをたくさんお書きになっていました。

特に芝居は、まあ光さん自身も好きだったでしょうし、また、そこで一緒に働いてる人たち、役者とか演出家とか、そういう人たちと共同作業で一つの出し物を作り上げていくのだ、というのがあって、これはオペラなんかに関してもそうなんですね。

まあ、特にオペラなんかですとなんとなく作曲家が自分が一番偉いような気になって、自分の思い通りに行かないと、なんというか、、

:怒る。

寺嶋:そう、怒ったりとかね、そんなような人もいるんですけども、林さんは、そういう風なものではない、という考えで、そういうところをすごく教わったというか、まあ林光さんの仕事を見ていると、そういうことがわかる、という感じでしたね。

(寺嶋陸也、トーク全文についてはこちら

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なるほど、林光は「劇場」そのものが好きで、いくつになられてもワクワクとお仕事をされていたことが伝わってきます。

そして寺嶋さんは、林光が影響を受けた人として、劇作家・詩人のベルトルト・ブレヒト(1898~1956)と、作曲家のハンス・アイスラー(1898~1962)を挙げていました。

そのハンス・アイスラーはシェーンベルクのお弟子さんだったのですが、共産主義に傾倒したアイスラーは、シェーンベルクのことを「一般民衆から離れているし」と批判し、師匠を「破門」したとのことです。

そんなアイスラーに共感した林光のソングを「シェーンベルク・シリーズ」で聴く、というのも、なかなか面白いではありませんか。

「ソング」、というのはもちろん「歌」のことですが、林光はブレヒトの影響もあり、劇中歌、集会でうたう歌、などをソング、と呼んでいたようです。

現在、 HISASHI も廻も、「ソング」の楽譜を眺めながら、時折、閃光のように浮かぶイメージを逃さないようにキャッチし、アレンジしているところです。

ホランダーと林光、天性の劇場人2人による「ソング」!

さあ、どうなりますか!乞うご期待!

廻 由美子

2024年4月4日・記

 

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<コンサート情報>

「新しい耳」@B-tech Japan

シェーンベルク・シリーズ

2024年7月6日(土)

15:30開演(15:00開場)

HISASHI(vo)x 廻 由美子(pf)

〜カバレット!笑いと抵抗の文化・ホランダーと林光〜

1919~のホランダーのカバレット・ソングの数々、そして林光の「行ってしまったあんた」「舟唄」「雨に濡れた木馬」他

チケットはこちら

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