by 廻 由美子

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寺嶋陸也ピアノ・ソロ〜20年代の400年
日時:5月10日 15:00開場 15:30開演
会場:B-tech Japan 東京スタジオ(東京都港区虎ノ門1-1-3 磯村ビル1F)
S.シャイト:イギリスの運命の女神の歌
F.クープラン:クラヴサン曲集 第3巻 第13オルドル
L.V.ベートーヴェン:6つのバガテル Op.126
F.シューベルト:12のレントラー D790 Op171
D.ショスタコーヴィチ:アフォリズム Op.13
寺嶋陸也:瞑想曲~西村朗追悼
音楽の変遷と世界の変遷が、まるで絵巻のように繰り広げられるプログラム!
その上、なんと今回は寺嶋陸也さんの自作自演もあるのです。
曲目がたくさんあるので、今日はあまり馴染みのない作曲家、17世紀のシャイトと18世紀のクープランについてお話をしましょう。
ザムエル・シャイト(1587〜1654)は、ドイツ初期バロックの作曲家。
肖像画を見ると真面目で少しおっかなそうな感じです。
17世紀前半のドイツといえば30年戦争ですが、シャイトは北ドイツのプロテスタント地域に留まり、戦時下を生き延びて作曲し、大バッハへの道を開拓してくれました。
ちなみに北ドイツは「辺境」であったので、音楽といえばイタリア!という風潮からまぬがれ、独自の様式を発展させることができたようです。
内田樹氏の「日本辺境論」という名著がありますが、辺境もなかなか良いものですね。
ではフランスのフランソワ・クープラン(1668〜1733)はどうでしょうか。
こちらは叔父様にルイ・クープランという有名な作曲家がいまして、お父様のシャルルもサン・ジェルヴェ教会のオルガニストでしたし、音楽一家です。
そのフランソワ君は、お父様をついで教会オルガニストとなり、その後もルイ14世のオルガニストに選ばれるなど栄光の階段をのぼります。
人も羨む成功ですが、文学や映画などで垣間見るフランスの宮廷社会は、平安時代の貴族社会に負けず劣らず「いけず」なようですし、優雅さや「エスプリ」を競いながら権力争いをする、という感じですし、嫉妬は渦巻くし、その中で貴族でもない音楽家がうまくやっていくのも大変そうです。
クープランの音楽は、その1曲1曲がまるで煌めく宝石のようですが、底知れぬ暗さをも感じさせるのはなぜでしょう。
人も羨む成功、と言いましたが、男も女も真っ白くお白粉を塗り、脂粉、香水、レース、扇、絹、宝石、などの中に策略と陰謀をしこたま隠し持っているような、そんな宮廷の中にいると、やはり疲弊するのでしょうか。
それに、音楽家といっても、その時代の宮廷にとっては、所詮召使い、といったところですから、まさに「凄まじきかな」の世界でしょう。
ただ優雅で美しいだけではない、クープランの世界もお楽しみください。
召使からの脱却!に向けて音楽家も頑張ります。ベートーヴェン、そしてシューベルトのご登場!
では次回もお楽しみに。
2025年2月8日日・記
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