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​更新履歴

Apr 13, 2018

インタビュー更新

「プログラムの聴きどころ・第2夜 HISASHI with廻 由美子〜カバレット・ソング〜[後半]を掲載しました!(クリックして読む)

Apr 11, 2018

インタビュー更新

「プログラムの聴きどころ・第2夜 HISASHI with廻 由美子〜カバレット・ソング〜[前半]を掲載しました!(クリックして読む)

May 07, 2018

クラシックニュース インタビュー動画更新

クラシック・ニュースによるインタビュー動画を更新しました!

主宰の廻由美子本人による聴きどころの紹介に加え、梯剛之さん本人が今回のプログラムについて語ってくださいました。(クリックして視聴する)

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廻由美子の音楽祭について

梯さんのコンサートによせて

interview

第2夜 HISASHI with 廻 由美子〜カバレット・ソング〜
 後半について語る

さて、新しい耳第2夜、HISASHI with 廻 由美子〜カバレット・ソング〜の後半についてお話ししたいと思います。

前半のシャンパンの泡のごときソングに対し、今度はベルリンのアウトロー代表みたいなクルト・ヴァイルのソングの数々です。

1900年にドイツのユダヤ人家系に生まれたヴァイルは二つの大戦を経験し、まさに「20世紀ッ子」とも言うべき人です。1918年、第一次世界大戦終結の年に首都ベルリンの音楽学校に入りました。
もちろん音楽学校では「作曲」だの「対位法」だのを学ぶわけですが、大戦後の街では内戦が激しさを増し、ひっきりなしにドンパチやっているような状況です。
音大の中では相変わらず19世紀の空気が色濃く支配していたのでしょうが、若いヴァイルは構わず
外の空気をどんどん吸い込み、それが彼の音楽の原点となっていきます。

車のブッブーという音、ミルク1瓶のために行列をするおかみさんたちの会話、街に立つ娼婦とヤク売人のやり取り、泥棒たち、泥棒よりも酷い成金、アメリカから入ってくるジャズ。
こういうものを思い切り吸収したヴァイルが1928年にベルトルト・ブレヒトと組んで書いたのが有名な「
三文オペラ」です。後半はこの「三文オペラ」を中心にクルト・ヴァイルのソングの数々を楽しんでいただこうと思います。

「三文オペラ」の主人公メッキーは、数々の悪に手を染めながらも実は裏で警視総監と手を組んでいる、というとんでもない男。でもそれもこれも、「権力持ってるバカなんか使いこなすの簡単さ」といった徹底的な「反権力」の表れとも言えます。
ブレヒトの脚本は風刺がピリリと効いて、霊感を得たヴァイルはこのオペラのために「
ジャーマン・ポップソング」を次々と書いていきます。だいたい「オペラ」と聞いて「椿姫」もどきを想像したら大間違い、19世紀の金持ち文化の象徴のような「オペラ」とは似ても似つかぬこの「三文オペラ」、これはやっぱりHISASHIに登場して頂かないといけません。

今回歌われるのはまず
マック・ザ・ナイフ」。
これは「歌われる三面記事」みたいなもので、大道芸人が「メッキー(マック)に誰々が殺されたぞ〜」なんて歌うわけです。でも歌っているのは張本人かも。

そしてメッキーの愛人でもあった娼婦ジェニーの歌う
海賊ジェニー
〜フン、今はこうして下女みたいな仕事してるけど、ある晩ヤツらを残らず大砲でズドンと皆殺しにしてやるのさ〜なんて歌います。

タンゴ・バラード
「ヒモのバラード」と呼ばれるこの歌は、メッキーが「ヒモ時代」を思い出して「オレはオマエを愛したし、オマエはオレを食わせてくれた」なんて歌い、途中からジェニーも加わり「売春宿が私たちの家だった」と歌い上げますが、実はもはや彼女はメッキーを警察に密告しているのです。

さて、三文オペラ以外のヴァイル・ソングも素敵です。


まずは「アラバマソング」です。
ブレヒトと再度組んだオペラ「マホガニー市の興亡」(1930年)の中の劇中歌で、娼婦たちが金と酒と男を探して「次のウィスキー・バーはどこよ」と歌います。

そしてNY時代に書いた「スピーク・ロウ
ナチスを逃れてNYに来たヴァイルが1943年に書いたブロードウェイ・ミュージカル「ヴィーナスの接吻」の中の曲。詞はオグデン・ナッシュ。
「恋を語るときは、声をひそめて」と歌うこの歌は色々なシンガーが様々な
歌い方をされていますが、今回の編曲はちょっと辛口。やっぱりヴァイルには
キラキラブローフドウェイよりもベルリンの裏町がピッタリ来ます。

さあ、後半のアウトローな世界、どうぞお楽しみに!

                                                                        

                                廻 由美子
 

interview

プログラムの聴きどころ

第2夜 HISASHI with廻 由美子〜カバレット・ソング〜

今日は第2夜にお送りするHISASHI with廻 由美子〜カバレット・ソング〜
の前半についてお話ししようと思います。
カバレットというのは、
要するにキャバレー!です。
でも現代の日本で言うような「キャバレー」や「キャバクラ」とは違いますよ。場所は1920年代のベルリンです。


20年代のベルリンって?
第一次大戦後の疲弊した貧しいベルリンに追い討ちをかけるようにハイパーイ
ンフレが起こります。庶民は飢え死にするか自殺するか、身を売るか泥棒にな
るか、ギリギリの選択を迫られていました。
しかしそういう状況を利用して大金持ちになる人はいつの時代もいるようでし
て、最新流行のキャバレーが夜な夜な光を放ちます。

 

そこは一歩入ると別世界。
にわか成金たちが最新流行のスレンダー・ファッションにボブ・ヘアといった
女性を伴い、最新流行の音楽に乗って狂ったようにダンスをし、明け方までシ
ャンパンを浴びるほど飲む、といった生活が繰り広げられていたのです。
卵一個の値段が朝と夜とでケタ違いに変わる、価値の無くなったお札を子供が
切って遊ぶ、と言うハイパーインフレ。そんな中でマトモに貯蓄をするような
人はいません。成金でなくても人々は刹那的になっていき、モラルも治安もど
んどん低下していきます。

 

今回のコンサートの前半は、その刹那的な享楽を追い求めるベルリンのカバレ
ット・ソング
をお送りしたいと思います。
フリードリッヒ・ホランダー(ホレンダーともよばれています)は1896年にロ
ンドンで生まれ、ベルリンで育ちます。お父さんはオペレッタの作曲家でした。
それを知った時に私はハタと膝を打ちました。なぜならば、常々ホランダーの
曲は、オペレッタ作曲家・レハールなどの香りがするなあ、と思っていたから
です。

 

さて、今回の聴きどころ!です。
鬼才HISASHIのこと、そりゃーもう一筋縄ではいきません。
今回歌うホランダーの曲に、なんと
彼が「日本語詞」を新たに書き下ろした
です!
ちょうど年代的にも
大正ロマンとダブル部分があるので(大正時代は1912年から1926年)、HISASHIの書いた日本語詞とホランダーの曲が素晴らしい化学変化を起こしました!これはまるで大正ロマンのカフェ・ミュージックのようです!
また、私のイメージで作った編曲と彼の日本語詞を合わせて見たらこれまたす
ごいマッチングで、一緒にやっているとまるで無声映画のピアニストと弁士に
なったよう。


HISASHIが作った詞の題名の一部をご紹介しましょう。
 

「やっぱりキートン」
「悲しきヴェルレーヌ」
「メリケンからブルース」
「呆れるほどにC調ね」


若い世代のためにちょっと解説しますと、例えば「キートン」とはもちろんあ
の最高の喜劇役者「バスター・キートン」
「メリケン」とはもちろん「アメ
リカ」のこと

さあ、これを見るだけでもイメージが広がりますね!

 

素晴らしい、と言うよりも「凄まじい」と言った方がピッタリくる彼の鬼才ぶ
り、言葉に対するセンス、スピード感、ビート感、そして4オクターヴに迫る
声域で、
軽やかにベルリンと大正ロマンを駆け抜けます
前半だけでもワクワクドキドキですが、後半もあるので乞うご期待。
次号では「カバレット・ソング」後半についてお話しします。
                                                   

廻 由美子

interview

プログラムの聴きどころ・第1夜 「エロイカ変奏曲」について

こんにちは。「新しい耳」を主宰しておりますピアノの廻 由美子(めぐり・
ゆみこ)です。


5月18日から開催される第22回目の音楽祭に向けて、少しずつ演奏されるプログラムの内容についてお話ししていこうと思います。
まず、第1夜の梯剛之(かけはし・たけし)さんが弾かれる
ベートーヴェン作
曲「エロイカ変奏曲」作品35
についてお話ししましょう。


この曲は「<エロイカ>の主題による15の変奏曲とフーガ」というやたら長い日本語タイトルで呼ばれたり、また「<プロメテウスの創造物>の主題による
15の変奏曲とフーガ」という題名で呼ばれたりしています。
しかし原題は「創作主題による変奏曲と15の変奏曲とフーガ」というもので、これが一番スッキリ簡単ですが、まあ、通称「エロイカ変奏曲」ということになっております。


なんでこんなに題名がややこしいかというと、テーマのメロディが彼のバレエ
作品<プロメテウスの創造物>作品43から取られている
、ということがあり、
また
交響曲第3番<エロイカ>作品55にもこれを使用した、ということから、
こうややこしくなったのだと思われます。
ベートーヴェンの原題「創作主題による」と言うのは「オレが創った主題」と
言うことですから、主題をどう使いまわそうが「オレの自由」な訳ですネ。


では、曲の内容を見ていきましょう。
この曲について、以前に私自身が書いた拙文(「ピアノの秘密」立風書房 野本由紀夫/岳本恭治編)を引用させていただきますと、イキナリ「
全くヘンな冒
頭である。
」と書き出しています。
ん??ヘン?
「<皇帝>の冒頭の和音と同じく、変ホ長調の主和音が堂々と鳴り響く。ここ
まではよろしい。問題なのはそこから始まる部分だ」


さて、何が問題なのでしょうか・・・
「<皇帝>がきらびやかなアルペッジオで目覚ましい効果をあげるのに対し、
こちらはメロディを伴わないバスだけの音型が静かに一歩ずつ前進する。しかもいきなり太鼓のような音が3つ鳴り響いたりし・・」と多少当惑気味。
タネを明かすと、そのバスの上にいよいよ<プロメテウス>のテーマが現れる、と言うわけです。

さあ、そこからは即興の名人、ベートーヴェンの八面六臂の活躍の始まり始まり〜、となります。


どんな活躍かと言いますと、拙文では、
「ヨーデルあり、ライン下りあり」だの、「大きな足の男が飛び跳ねるのあり、小さな男が駆け回るのあり」、さらには「羊飼いの角笛あり、ブカブカドンドンあり、トルコの軍隊あり、酔っ払いあり」、と大騒ぎな様子で、「
全くカーニバルなのである」と書いています。私もこのCD録音をしたことがあるので、その時に感じたままをワイワイ書いた、と言うわけですね。
でもさすがベートーヴェン。ここから超人的力を発揮し、グイッと前進するのです。
このカーニバルの後には「真実を歌い上げるラルゴがあり」そしていよいよ「
すべての扉を開くフーガがあり」、「そして頂点までいったところであのテー
マが美しく、壮大に戻ってくる」という事でして、拙文では感動をそのまま文で伝えようと一生懸命です(^^;)


梯さんの演奏は、音楽への愛と全身全霊での献身によってのみミューズから与
えられる霊感に満ち、自由闊達な即興性に富んでおり、まさにこのベートーヴ
ェンの傑作を弾くのにふさわしい演奏家と言えるでしょう。
皆様もどうぞ楽しみにしていてください!
                               

                               廻 由美子

interview

音楽祭の主宰者、廻 由美子が第22回の聴きどころを語る!

第1夜 梯剛之〜エロイカ変奏曲〜について

 

耳:今回も魅力的かつ刺激的なラインナップですが、第1夜の梯剛之さん

 (かけはし・たけし)についてお話しくださいますか。

 

廻:はい、梯さんはこの音楽祭に2度目のご登場となります。最初にお聴きした

  時、その自由闊達な音楽と溢れるファンタジーにすっかり魅了されました。

  まず彼は音楽が好きで好きでたまらないのですね。それがダイレクトに伝 

  わってきました。そして作品に対するリスペクトは並々ならぬものでして

  「この素晴らしい傑作を全身全霊で伝えたい」という気概も伝わってくるの

  です。

 

耳:なるほど、すごく生き生きとした印象ですね。

 

廻:音楽が、まるで今、目の前で生まれてくるような感じです。今回は

  ベートーヴェンの「エロイカ変奏曲」を中心にプログラミングされていま

  す。この曲はCDも出されていたのですが、今は廃盤となり、目の前で

  聴ける貴重なチャンスです。他の曲も、お得意のドビュッシー、プロコフィ

  エフ、そしてウェーベルンなど多彩です。

 

耳:あまり普段、梯さんのコンサートでは聴けないような曲目ですね。

 

廻:梯さんは素晴らしい芸術家で、多面体のような感じです。どの面からも

  光が放射されているというか。作品が思いもかけない光を当てられるので

  ワクワクします!

第2夜 HISASHI & 廻 由美子〜カバレット・ソング〜について

 

耳:では第2夜のHISASHIさんとの共演についてお聞かせ 

  ください。

 

廻:HISASHIさんは本当に「ワン・アンド・オンリー」なヴォーカリストで、

  ほんと、鬼才ですね〜。

 

耳:鬼才・・・?

 

廻:そうなんですよ。隅々まで彼の「美学」が徹底して行きわたっているし、

  それを表現する技術がハンパないんですね。4オクターヴ近くまで出せる    声と見事なリズム、そして良い意味での「冷徹」な耳でもって彼の美学に叶

  うものだけを厳選していくような。

 

耳:ベルリン20年代のカバレット・ソング、いわゆるキャバレー、ということ

  ですが。

 

廻:はい、でもそれをそのまま持ってきてもオカシイので、前半のホランダー

  の曲はHISASHIが「日本語詩」をつけています。まるで無声映画を見てい

  るような感じです。あ、そういえば彼の無声映画の弁士は最高ですよ!

 

耳:楽しそうですね!では第3夜の寺嶋陸也さんについてはどうでしょう。

第3夜 寺嶋陸也の耳vol.4 ピアノ・ソロ〜聖なる音・世俗の楽〜について

 

廻:寺嶋さんは今回で4度目のご登場で、春の「新しい耳」になくては

  ならない方です。

  毎回、ピーンとスジの通った、決して媚びず、なびかず、意志を貫く

  演奏で、感動します。終わると客席からため息とも悲鳴ともつかぬ声が

  上がるんですよ。

 

耳:寺嶋さんは作曲家でいらっしゃいますね。

 

廻:もともと、作曲家と演奏家は区分けされてないですよね。モーツアルトも

  ベートーヴェンも演奏家だし、また、フルトヴェングラーもグールドも作曲

  していましたし。音楽家、というのは当然幅広いものですから。

 

耳:今回はバッハも演奏されるということですね。

 

廻:そうなんですよ!「フランス風序曲」という題名ですが、序曲とそれに続く

  数曲の舞曲からなっています。寺嶋さんのバッハを聴くのは私も初めてで、

  ものすごく楽しみです。

 

耳:そのほかにもモーツアルトやベルク、そして安達元彦の作品ですね。

 

廻:はい。彼の中でスジがブレずに通っているのだと思います。伝えたいこと

  がハッキリしているのですね、常に。でもそれを本当に実行するのは大変

  なことですけれど、実行し続けていらっしゃるのでスゴイなあ、と思い

  ます。

 

耳:どの日も楽しみですね。ありがとうございました。

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第3夜「寺嶋陸也の耳 vol.4 ピアノ・ソロ〜聖なる音・世俗の楽」の曲目について

第3夜「寺嶋陸也の耳」で演奏される「ピアノのために」の作曲家、安達元彦氏は、なんと寺嶋陸也さんの恩師でもあるとのこと。二重に楽しみですね。
さすが恩師のことで、寺嶋陸也さんご自身が解説を寄せてくださいました。

 

安達元彦(1940~) ピアノのために (1969/72)
I.  Accordo  II.  Ostinato   III. Monodia  
 3つの楽章は、そのタイトルとともに、プレリュード、サラバンド、トッカータの3楽章から成るドビュッシーの《ピアノのために》へのオマージュとなっている。1969年にまずMonodiaが作曲・初演され、のちにあと2曲が書き加えられた。どの楽章も日本の民謡や大衆芸能における唄にみられる五音音階の「節回し」が鍵盤の上でさまざまな形に変容され、きわめて厳密に記譜されつつもジャズのインプロヴィゼーションに近い展開をみせている。間のとり方など奏者に大きな自由も与えられているが、即興演奏の部分は無い。
Accordoとは、音楽用語としては和音のことだが、一致、合意などの意味で、五音音階が縦にも展開されるのを特徴とする。Ostinatoは、「固執低音」と訳され、ある決まった音型が何回も繰り返されることをいうが、ここでは延々と続く田舎節の調べに、それとは違う調の五音音階が執拗にまとわりつく。Monodia では、縦に同時に鳴らされるのは常にひとつの音だけで(オクターヴが重ねられることはある)、ただひとつの和音も存在せず、それでいながら爆発的なクライマックスを演出する、極めて独創的な曲となっている。

 

寺嶋 陸也

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第3夜「寺嶋陸也の耳 vol.4 ピアノ・ソロ〜聖なる音・世俗の楽」の曲目について

今回は第3夜「寺嶋陸也の耳 vol.4 ピアノ・ソロ〜聖なる音・世俗の楽」の曲目についてお話ししようと思います。
今回はロ短調の曲が集まっています。その「こだわり」についてはまた後日、寺嶋さんご本人にお話いただきましょう。


W.A. モーツァルト: アダージョ ロ短調 K.540(1788)
フランス革命勃発の前年に書かれたこの曲は、なんとも不穏でミステリアスな雰囲気をたたえています。モーツァルトはいったい何と会話していたのだろう、いったい何が見え、何が聴こえていたのだろう、と思うと少し怖いような気がします。
曲中に幾度もあらわれる嘆き、ため息の表現は、モーツァルト自身の声のようでもあり、空中に今もなお漂うたくさんの霊魂の声のようでもあります。最後は町長の和音になるのですが、それがさらに不気味さを際立たせ、その暗い微笑みは我々に永遠の謎を投げかけて来るようです。

 

アルバン・ベルク:ソナタ 作品1 ロ短調
J・シュトラウスの「ジプシー男爵」の初演の年に生まれたベルクは、まさにフロイト、クリムト、「ウィーン工房」などに囲まれた青春時代を送ることとなります。
爛熟文化の影響でしょうか、彼も10代で家の使用人との間に子供ができたり、自殺を図ったり、時代をそのまま映し出す生き方をしていたようです。10代で子供が!これはすごいですね!
しかし、1904年にシェーンベルクと出会い、そこから歴史的交友が始まります

このソナタはベルク22歳の時に師のシェーンベルクの勧めで一楽章形式として発表されました。22歳、とはいえ、何しろ禁断のラブ・アフェアに自殺未遂ですから彼の感性ははるか先へと進んでいます。難しい分析は置いておき、曲想を見ますと、官能的な音型は波のように寄せては返し、焦らし、盛り上がり、クライマックスを引き延ばしと、まさになんと言いますか(汗)、ハイ、みなさまがそれぞれの感性でお聴きいただければと思います。


ベルクの後は安達元彦先生の曲が続きますが、この曲については寺嶋陸也さんご自身からのメッセージがありますので別途ご紹介いたします。


さて、後半のプログラムを飾るのはバッハです。


J.S. バッハ :フランス風序曲 ロ短調 BWV831
1735年、バッハ50歳の時に「イタリア協奏曲」と、この「フランス風序曲」が書かれました。
イタリア様式、フランス様式それぞれを血肉としたバッハが自由に花開かせ実に闊達とした音楽です。別にバッハはイタリアに勉強に行ったり、フランスに留学したりしたわけではありません。しかしそれぞれの色彩を様式の中で自
由に泳ぎまわり、それぞれの色彩を見事に表したバッハは、まさに音楽から世界が見える人だったに違いありません。
1台の鍵盤楽器、1人の奏者で「ソロ」と「トウッティ(全員、総奏)」の対立構造を語り口の面でも響きの面でも極めつくし、実に雄弁な音楽です。序曲に続く魅了的な数々の舞曲は、宮廷舞踊から村祭りまで、踊りの根源的な要素に満ちています。どうぞお楽しみください! 

 
                                           廻 由美子

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